概要
アマゾンは、ユーザーの認証を受けてアマゾンで買い物を行うAI搭載ブラウザ「Comet」を開発したPerplexityを提訴しました。この訴訟は、人間がAIエージェントにウェブサイトへの訪問を委任した場合、誰が「許可された訪問者」とみなされるかという根本的な問題を提起しています。
2026年3月10日、連邦地裁はCometによるアマゾンのログイン済みページへのアクセスを禁止する仮差止命令を出しました。アマゾンは、Cometがユーザーの代わりにログインして商品閲覧や購入を行うことが、CFAA(コンピュータ詐欺及び不正使用防止法)に基づく「許可されていないアクセス」に当たると主張しています。
しかし、その1週間後、第9巡回区控訴裁判所は、Perplexityの控訴審が行われる間、この仮差止命令を一時停止しました。これは、地裁が採用したCFAA理論が、より上位の裁判所で精査される可能性を示唆しています。
Perplexityは5月8日に提出した控訴趣意書で、ユーザーの明示的な許可のもとで訪問するAIエージェントに対し、アマゾンのCFAA理論は「根本的に不適合」であると反論しました。
控訴裁が仮差止命令を一時停止した理由として、Van Buren v. United States (2021)事件でCFAAの適用範囲が狭められたこと、および代理人による行為を本人に帰属させる代理人法理の2つの法的圧力が指摘されています。
控訴裁の判決は、すべての小売業者、マーケットプレイス、予約プラットフォーム、SaaSウェブサイトにとって、AIエージェントのアクセスに関する今後の先例を確立することになります。
解説
この訴訟は、ウェブサイト運営者にとってAIエージェントのアクセスをどう扱うかという、差し迫った問いを投げかけています。今回の判決次第で、各ウェブサイトがこれまで無意識に採用してきた「デフォルトのアクセス方針」の見直しが不可欠となるでしょう。
ウェブサイトの所有者は、自社の利用規約における「自動アクセス」に関する条項を改めて確認し、従来のスクレイピングボットと、ユーザーの指示に基づいて行動するAIエージェントのどちらにも適用されるのか、あるいは意図通りの効果を持つのかを検討し、必要であれば更新が求められます。
また、robots.txtやWAF(ウェブアプリケーションファイアウォール)などの技術的なアクセス制御が、主要なAIエージェントのユーザーエージェント(例: GPTBot、Perplexity Cometなど)に対して意図せずブロックしていないか、監査する必要があります。
そして、AIエージェントのアクセスに関して、明確な方針を決定することが推奨されます。方針としては、「歓迎(ユーザー委任エージェントを受け入れ、APIを提供するなど)」「ブロック(不正アクセスとみなし、規約と技術で阻止)」「提携(専用APIを構築し、そこからアクセスを許可)」の3つの選択肢が考えられます。
第9巡回区控訴裁判所の口頭弁論(6月11日)では、代理人法理の扱い、エージェントアクセスの種類の区別、そしてCFAAがAIエージェント時代にどう適用されるかという点が注目されます。この判決は、今後のデジタルビジネスにおけるAIエージェントの役割と、それに対する法的・技術的な対応の方向性を決定づけるものとなるでしょう。
- 掲載元: Search engine journal
- 公開日: 2026-06-01T00:56:10+00:00
